人事異動のポイント

人事異動で大切な要件は「動かす側の成長への期待の明示」と「動かされる側の納得」です。これには個人を活かすローテーション計画が必要です。そのローテーション計画は、個別の長期的な次のような観点からの育成計画が必要になります。

@異動先で、なにを、いつまでに、やりたいのかを本人と上司が話し合って決め、それをやり終えて、初めて次の異動を考えるルールの確立を図る。

A各社員の会社が期待する育成基本計画を作り、それに則った異動を行う。

B管理者に部下一人一人の個性と能力を把握させ、その人にあった指導育成が出来る能力を高める。

配置転換の法的視点

配置転換を命じるにはそのつど労働者の同意が必要でしょうか?

現在の判例や多数説はそうは考えていません。この点に関して「東亜ペイント事件最高裁判決」では、『労働協約・就業規則で業務上の都合により従業員に転勤を命じることが出来る旨の規定があり、現に転勤が頻繁に行われているような場合、勤務地を限定する旨の特約のもとに採用されたのでなければ、会社は労働者の個別同意なしに転勤を命じることが出来る』と判示しています。

 

 もっとも、配置転換命令といえども無制限ではなく、東亜ペイント事件でも、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合または業務上の必要性が存する場合であっても当該転勤命令が不当な動機・目的を持ってなされものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときは、権利の濫用として配置転換命令が無効となる旨を判示している。

 

ところで、権利濫用か否かを判断する上で考慮要素とされている業務上の必要性は、余人をもって代え難いという高度の必要性までは不要であり、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤労意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められればよいとされている。

 

これまでの裁判例から、労働者が著しい不利益を被るとして転勤を拒否できるとされて場合というのは、病気の家族がいるといったような場合であり、配置転換、転勤が本人と家族の生活に障害を及ぼす場合などである。

 

裁判所は、使用者の配置転換の権利濫用について

 @業務上の必要性(人選の相当性を含む)

 A労働者が受ける不利益の程度の比較考量を中心に

 B手続きの正当性

も考慮して判断している。

職種変更の法的視点

一般に、労働者が企業に就職する場合には、特別の合意が無い限り、企業の命じた業務を、企業の命ずる場所で行うという「包括的合意」が成立しているといわれている。

 企業は権利の濫用で無い限り、その人事権にもとづいて労働者を適正に配置し、適切な業務を命じる裁量権を有している。

 ところが個別の契約において、企業と労働者との間に、勤務地や職種を限定するといった特別の合意がある場合、企業の人事権は当然制約を受け、予定していた勤務地外の転勤、他の職種への転換などは労働者の合意が無い限り命じることができない。

 また専門的業務の場合、一般的な総合職と違い、就職時の労働契約にさまざまな特別の合意を盛り込むことがあり、この場合は職種を限定する旨の合意の有無が、職種変更を命じ得るかどうかの分かれ目となる。

 

裁判所は、職種限定の合意の有無に関する判断指標は次のとおりとなる。

 @雇用契約書における合意事項記載の有無、及びその内容

 A雇用契約締結時における当事者の話し合いの状況

 B採用試験の特殊性

 C募集申込関係書類における記載内容

 D他の職種の労働者との労働条件の差異

 E就業規則・労働協約における職種変更に関する規定の有無

 F過去における配置転換の状況と同意の有無

 

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