労働トラブルの3大原因とは

社会保険労務士の広報誌である月刊社労士2018年4月号で、全国社会保険労務士会が、平成29年6月15日から同年7月31日までに全国の社会保険労務士に行った「保佐人業務及び紛争解決手続き代理業務に関する実態調査」の集計結果を発表しました。

 

その中の、「特定社会保険労務士として、個別労働関係紛争の解決に関与した事案について」から抜粋します。

 上記統計の個別労働関係紛争とは、あっせん代理業務に関する事案ですので、労働基準監督署に駆け込む労働トラブルはこれよりもはるかに多くあり、労働関係ではなく民事上のトラブルも多数あります。

 

 

 

 

 

 紛争の内容(複数回答あり)   件数     割合

1.就業規則・労働契約       34     5%

2.人事・配置転換・出向      30      4%

3.セクハラ・パワハラ・いじめ   120     18% 

4.賃金・割増賃金・退職金     115     17%

5.労働時間・休日・休憩      20     3%

6.退職・解雇・雇止め       323     47%

7.懲戒処分・損害賠償       19      3%

8.安全衛生・労災事故・労災補償   8     1%

9.その他             12      2%

合計               681

 

 

という結果があります。

 

この結果を見ると、最も多い分野の退職・解雇・雇止めが47%約半数を占め、

 

上位3分野の

  • 退職・解雇・雇止め     47% 
  • セクハラ・パワハラ・いじめ 18%
  • 賃金・割増賃金・退職金   17%

を合計すると82%になるのです。

 

 ということは、この3項目を重点的に注意すれば、労働トラブルの大多数は予防できるのです。

 

 

 

 

【参考】目的金額と和解金額の調査結果も掲載します。

 

目的金額    件数

0円        22

1円~10万円   19

11~50万円        96

51~100万円    96

101~300万円  101

301万円以上    43

 

未回答          179

 

 

 和解金額    件数

0円                 35

1円~10万円   52

11~50万円    153

51~100万円    64

101~300万円  35

301万円以上    9

 

 

未回答           20



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1.解雇、雇用契約終了

1つ目は退職、解雇や雇止めをはじめとする雇用契約終了

 

 

退職

 

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1.辞職(自己都合退職)

 辞職とは、労働者による労働契約の解約です。一般的に、自己都合退職といわれています。期間の定めのない雇用契約においては、

労働者は2週間の予告期間を置けば、いつでも、理由を要しないで、労働契約を解約できます(民法627条1)。

ただし、給与が毎月1回払いの完全月給制(遅刻、欠勤控除無し)の場合は、解約翌月以降に対してのみなすことができ、

しかも当月の前半においてその予告をすることを要します(同条2項)。

 これに対して、期間の定めのある雇用契約の場合は、「止むを得ない事由」あるときに「直ちに契約の解除をする」ことができます

(民法628条)

 辞職(退職)の意思表示は、合意解約の場合と異なり使用者に到達した時点で解約告知としての効力が生じ、撤回できません。

2.合意解約(依願退職)

 合意解約とは、労働者と使用者が合意によって労働関係を将来に向けて解約することです。解雇ではないので、

労働基準法の解雇規制(労働基準法第19,20条)や労働契約法の解雇規定(労働契約法第16条)関係諸法令の規制を受けません。

 労働者がこの依願退職における退職願を提出した後にそれを撤回したり、意思表示の瑕疵を主張してその効力を争う事件が

起こりますが、裁判例では、「合意解約の申し込みたる

退職願は使用者の承諾の意思表示がなされるまでの間は撤回できる」としています。(平成9.8.29大阪地裁 白頭学院事件)

3.定年

(1)定年とは、労働者が一定の年齢に達したときに、労働契約が終了する制度です。

 

(2)65歳までの雇用継続義務

 高年齢者雇用安定法で雇用継続義務を定めています。

 まず、第8条「事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は60歳を下回ることができない」

 そして、第9条1項「65歳の定年を定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保する

ため①当該定年の引き上げ、②現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続き雇用

する制度(「継続雇用制度」)の導入、③当該定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならない

 

(3)定年後の再雇用・雇用延長

 定年後の再雇用について、次のような判例があります。「定年後の再雇用は、新たな労働契約の締結としてその内容につき

労働者と使用者の双方の合意を要する。したがって、使用者は再雇用するものを選別したり、

再雇用を拒否することができる。」(東京地判平成8.3.27 東京海上火災保険事件、大阪地判平10.1.23 三井海上火災保険事件、東京地判平14.1.21 三室戸学園事件)

 

4.倒産等

 使用者が法人であって、その法人が解散する場合には、清算手続きが完了すれば法人格は消滅し、労働契約関係も消滅します。

倒産による解雇の場合であっても、労働基準法第20条の解雇予告義務が適用されます。

 また、倒産により給料の未払いが発生することがありますが、「賃金の支払の確保等に関する法律」で一定の範囲で労働者

を救済しています。未払賃金の立替払といい、次のような要件があります。

 立替払を適用される事業主の要件として、労災保険に1年以上加入していて、次のいずれかに該当することが必要です。

①破産手続き開始の決定を受け、または特別清算の開始命令を受けたこと、

②民事再生手続開始の決定または更生手続開始の決定を受けたこと、

③中小企業の場合、その事業活動が停止し、再開の見込みがなく、かつ賃金支払能力がないことが労働基準監督署長によって

認定されたこと。

 立替払を受ける労働者の要件は、①、②の申し立てがあった日または③の認定の申請が退職労働者によりなされた日の

6箇月前の日以降2年間に、上記要件を満たす事業主の事業から退職したことです。

 この立替払の対象となる賃金は、退職日の6箇月前の以後立替払の請求日の前日までの期間において支払期日が到来している

定期給与および退職金であって、その総額が2万円以上のものであること。実際に、立替払が行われる賃金の額は、立替払対象

賃金中の未払い分(年齢に応じて上限あり)の80%に相当する額です。

 この、未払賃金の立替払事業は、労災保険事業である社会復帰促進等事業の一つとして行われますので、この事業の費用は、

労災保険料によって賄われています。

 

 

解雇

 

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解雇に関する法律

【労働契約法】

 (解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、

無効とする。

 

【労働基準法】

(解雇制限)

第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに

産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、

使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が

不可能となつた場合においては、この限りでない。

② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

(平九法九二・一部改正)

 

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。

三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を

超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに

至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

一 日日雇い入れられる者

二 二箇月以内の期間を定めて使用される者

三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者

四 試の使用期間中の者

解雇の4要素

どういう場合に整理解雇が認められるかといいますと、これまでに数々の裁判例が出されており、それによれば少なくとも

4つの要素が満たされなければ整理解雇は認められず、4要素を欠く解雇は解雇権の濫用となって無効とするのが一般的な考え方です。

この4つの要素とは、

(1)整理解雇の必要性が本当にあること(会社の維持・存続を図るためには人員整理が必要であること)

 

(2)整理解雇を避けるための努力を会社が尽くしていること(解雇に先立ち、退職者の募集、出向その他余剰労働力吸収のために

相当の努力が尽くされたこと)

 

(3)対象者の選定に合理性があること

 

(4)労働者側との間で十分な協議が尽くされていること(解雇の必要性・規模・方法・解雇基準等について労働者側の納得

を得るために相当の努力がなされていること)

 

というものです。

 

 整理解雇を行うには、まず、解雇に先立って希望退職者の募集や出向、休業その他、整理解雇を避けるための努力を尽く

さなければなりませんし、次に労働者側への説明を重ねなければなりません。

 

 これまでの裁判で解雇が無効とされた例として、人員整理がやむを得ない事情であることなどを説明して協力を求める

努力を一切せず、かつ、希望退職の募集の措置をとることもなく、解雇日の6日前になって突如通告

したケース(あさひ保育園事件 最高裁 昭58.10.27)などがあります。

 

 

雇止め

 

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雇止めとは

雇止めとは、有期労働契約(期間を定めて締結された労働契約)については、契約更新の繰り返しにより一定期間雇用

を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をしないで期間満了をもって退職させることです。

雇止めに関する法律

【労働契約法】

第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了

するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 

2 使用者は、使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、

必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないように配慮しなければならない。

有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準

有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準

平成15年厚生労働省告示

(平成20年3月1日一部改正)

1 趣 旨

 有期契約労働者について適切な労働条件を確保するとともに、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態と

して活用されるようにするためには、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに際して発生するトラブルを防止し、

その迅速な解決が図られるようにすることが必要であることから、厚生労働大臣が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに

関する基準」を定めることとし、当該基準に関し、行政官庁が必要な助言及び指導を行うことができることとしたものであること。

 

2 内 容 (契約締結時の明示事項等)

第1条

 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の

期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。

2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約

を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。

3 使用者は、有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、

速やかにその内容を明示しなければならない。

 

(解説)

1 本条により明示しなければならないこととされる「更新の有無」及び「判断の基準」の内容は、有期労働契約を締結す

る労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要するものであること。

 たとえば、「更新の有無」については、

  ・自動的に更新する

  ・更新する場合があり得る

  ・契約の更新はしない

等を明示することが考えられるものであること。

 

 また、「判断の基準」については、

  ・契約期間満了時の業務量により判断する

  ・労働者の勤務成績、態度により判断する

  ・労働者の能力により判断する

  ・会社の経営状況により判断する

  ・従事している業務の進捗状況により判断する

等を明示することが考えられるものであること。

 

2 なお、これらの事項については、トラブルを未然に防止する観点から、使用者から労働者に対して書面を交付する

ことにより明示されることが望ましいものであること。

 

3 本条第3項については、使用者が労働契約締結時に行った「更新の有無」及び「判断の基準」に係る意思表示の内容

を変更する場合に、当該労働契約を締結した労働者に対して、速やかにその変更した意思表示の内容を明示しなければなら

ないものであること。

 

(雇止めの予告)

第2条

 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に

係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しな

いこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

 

(解説)

本条の対象となる有期労働契約は、

  ・有期労働契約が3回以上更新されている場合

  ・1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、当該労働契約を締結した使用者との雇用関係が初回の

契約締結時から継続して通算1年を超える場合

  ・1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合であること。

なお、30日未満の契約期間の労働契約を3回以上更新した場合又は当該労働契約の更新を繰り返して1年を超えた場合

の雇止めに関しては、30日前までにその予告をするのが不可能な場合であっても、本条の趣旨に照らし、使用者は、

できる限り速やかにその予告をしなければならないものであること。

 

 

(雇止めの理由の明示)

第3条

 前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なく

これを交付しなければならない。

2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求した

ときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

(解説)

「更新しないこととする理由」及び「更新しなかった理由」は、契約期間の満了とは別の理由を明示することを要するものであること。

 例えば、

  ・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

  ・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため

  ・担当していた業務が終了・中止したため事業縮小のため

  ・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

  ・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため

等を明示することが考えられるものであること。

 

(契約期間についての配慮)

第4条

 使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者

に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、

契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

 

(解説)本条における「労働契約の実態」とは、例えば、有期労働契約の反復更新を繰り返した後、雇止めをした

場合であっても、裁判において当該雇止めが有効とされる場合のように、業務の都合上、必然的に労働契約の期間が

一定の期間に限定され、それ以上の長期の期間では契約を締結できないような実態を指すものであること。

 

2.ハラスメント

2つ目は、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント等のハラスメント

 

 

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セクシャルハラスメントとは

セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)とは「職場上の地位を利用した性的嫌がらせ」

です。そして、セクハラに関しては男女雇用機会均等法21条で「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮」

として定められており、指針も告示されています(平成10年3月13日年旧労働省)。

 指針では、セクハラを、性的関係を強要され、それを拒否したために解雇・配置転換・減給等の労働条件の不利益となるような

「対価型」と身体に不必要に触れるなどの性的言動により労務提供が困難になり、また、心身に支障をきたす「環境型」の2類型に

分類しています。

セクハラの法的視点

セクハラは、被害者が決定する、という考え方があります。

とは言うものの、会社として何ら対策を講じてなければ、社会的な影響も大きく、裁判で莫大な賠償請求をされることも起こっています。

 

会社が出来る予防策としては、就業規則へのセクハラ防止の条文を記載、違反した場合の懲戒規定の記載、

就業規則の届出が不可欠になります。また苦情処理委員会等の設置も必要になります。

 

セクハラに関しては、企業側が問題解決の努力を怠ったか、救済システムが無いといった場合に裁判となり、

結果的に企業は大きなダメージを受けることになります。

 

そこで、厚生労働省が提案する一般的な社内システムをご案内します。

 

 【相談・苦情対応への流れ】

 

1.相談・苦情窓口の設置

  人事担当者、苦情処理委員会等が相談を担当する

 

2.事実関係の確認

   相談者から、加害者とされた者から、同僚との第三者からのヒアリングを行う

 

3-1 事実が確認できない場合

  職場環境の見直しと防止策の徹底

  相談者への説明

  当事者間の関係改善の援助

 

3-2 事実が確認できた場合

  会社の対応を検討

  雇用管理上の措置(配置転換、不利益回復、メンタルケア当事者間の関係改善の援助)        

  相談者への説明

  就業規則のもとづく加害者への制裁(出勤停止、解雇等の懲戒処分の適用)

  再発防止策の徹底

 

 この流れで一番大切なのは「事実関係の確認」です。被害者、加害者(とされている者)双方のヒアリングだけでなく、

第三者のヒアリングの必要になります。

もちろん、相談窓口の中において話された事柄、確認した事実等々の個人的な秘密は外部に漏洩されないように完全に

守らなければなりません。

 

 

3.残業代等の賃金未払い

3つ目は、残業代の未払いに代表される、賃金未払い

 

 

 

時間外労働

 

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時間外労働とは

時間外労働とは、原則として法定労働時間で定められている1週40時間、1日8時間(例外として変形労働時間や一定の

特例業種があります)を超えて労働させることができませんが、災害などの通常予見され得ない臨時の必要がある場合、

公務のために臨時の必要がある場合、業務の繁忙の場合等に関して、労働基準法では、一定の要件のもとにこの法定労働時間の

原則を超えて労働者を働かせることができます。

 ただし、時間外労働の基本的な問題として、36協定があれば時間外労働をさせることができるかというと、会社が一方的に

命じることはできません。まず、使用者から労働者に時間外労働の申し出があり、つぎに、それに対して労働者からの承諾が

あって初めて時間外労働ができるのです。もちろん、使用者の許可なく勝手に居残っていたり、休日に出勤した場合は業務命令

違反の問題になります。

1.災害その他避けることができない事由による場合

 災害その他避けることができない事由によって臨時に時間延長が必要な場合には、その必要な限度まで法定労働時間を

超えて労働させることができますが、労働基準監督署長の許可が必要であり、事態急迫のためこの許可を受ける暇がない場合には、

事後に届け出が必要になります。この「災害その他避けることができない事由による場合」の範囲は次のような行政解釈があります。

①単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めない

②急病、ボイラーの破裂その他人命または公益を保護するための必要は認める

③事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械の故障の修理は認めるが、通常予見される部分的な修理、

定期的な手入れは認めない

④電圧低下による保安等の必要がある場合は認める

(昭和22.9.13基発第17号、昭和26.10.11基発第696号)

また、災害その他避けることができない事由による場合であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

2.時間外労働に関する労使協定による場合

 労働基準法第36条では、使用者は労働者代表と書面による協定をし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、

法定労働時間を超えて、その協定の範囲内で労働させることができる、と定めています。この協定書のことを通称、36協定といいます。

3.時間外労働を命じる根拠

 36協定の締結・届け出は、適法に時間外労働を行うための要件であり、1日8時間を超えて働かせてはならないという法律上

の禁止を解くための手続きです。したがって、36協定の直接的な効力は法定労働時間を超えて時間外労働させても違法として

処罰の対象とされない刑事上の免罰的効力に限られ、時間外労働を命じる根拠(労働者が時間外労働の命令に服すべき義務)

はこの36協定にはありません。その根拠は、労働契約や就業規則で定められるべきです。

 それでは、労働契約や就業規則で時間外労働をさせることが定められていれば、強制的にさせることができるかというと

そうとも限りません。本来であれば、時間外労働命令はその都度、労働者の同意、承諾を得て行われるべきですが企業の経営、

労働の実態からみて無理があるように思われます。

 したがって、労働契約や就業規則で時間外労働の義務を定めている場合で、その規定の内容が合理的であるときには、

命令に従うべき義務があるとする考え方が妥当であるので、この命令を拒否すると、業務命令違反になることも考えられます。ただし、労働者に時間外・休日労働を行わない止むを得ない事由があるときには、その命令は権利濫用になり、とりわけ休日労働についての業務上の必要性は慎重に判断するべきです。

4.時間外労働の事例

(1)所定労働時間が7時間30分の場合

1日の所定労働時間が7時間30分であって、実際の労働時間が8時間00分である場合は、7時間30分を超えて8時間00分まで

30分間の労働時間は、原則として割増賃金を支払う必要はありません。しかし、この30分間の労働した時間に対する賃金は支払

う必要があります。労働基準法では、原則として1日の労働時間が8時間を超えた場合に割増賃金を支払うことを定めているので、

それに満たない時間には割増賃金を支払わなくてもいいのです。もっとも、就業規則で、所定労働時間を超えて労働した

場合には割増賃金を支払うという規定していれば、それに従わなければなりません。

 

(2)遅刻した者が所定労働時間を超えて労働した場合

 遅刻をした者を、遅刻した時間だけ、所定の終業時刻以後も労働させても、それは労働基準法上の時間外労働ではないので、

割増賃金を支払う必要はありません。ただし、原則として1日の労働時間が8時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があります。

 

(3)労働者が自主的に居残っていたり、休日に出勤した場合

時間外労働は、まず、使用者から労働者に時間外労働の申し出があり、つぎに、それに対して労働者からの承諾があって初めて

時間外労働ができるのです。ですから、使用者の許可なく勝手に居残っていたり、休日に出勤したときに、業務災害発生したり、

通勤歳が発生すると会社の安全管理が問われますので、勝手な居残りや休日出勤は禁止するべきです。

 

(4)講習会等に参加する場合

 時間外労働ということの前に、労働時間になるかどうかを考えると、「労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督のもと

にある時間」なので、使用者の指示もなく、その管理下からも離れ、労働者が真に自発的に、自主的に参加するのであれば、

業務に直接関連するものであっても労働時間とは考えられません。しかし、労働者の自主参加としていても、不参加者に不利益

を課すことがあった場合には、使用者の指示があったものと認められるので、これは労働時間となります。当然、法定労働時間

を超えた時間には割増賃金を支払わなければなりません。

 

 

割増賃金

 

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1.割増賃金

 割増賃金は、時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合に支払いが義務付けられていて、その割増率は、

次の通りに定められています。(労働基準法第37条)

①1箇月の時間外労働時間の合計が60時間までのとき、および深夜労働(午後10時から午前5時まで)については通常

の賃金の2割5分以上の率

②1箇月の時間外労働時間の合計が60時間を超えたときの60時間を超える時間分は5割以上の率

 ただし、この5割以上という割合は通常の時間外労働の割増率である2割5分に更に特別の割増率として2割5分を追加

したものですが、この特別の割増率の部分については、労使協定を定めることで、割増賃金の支払いに代えて通常の賃金

を支払う休暇(代替休暇)を与えることができます。

③休日労働については通常の賃金の3割5分以上の率

 

ただし、この割増率の改正は平成22年4月1日から施行されていますが、当分の間、適用しない、と労働基準法第138条で

定められています。

2.割増賃金の基礎とすべき賃金の範囲

割増賃金の基礎となる「通常の賃金」の範囲は、一般的に基本給と法律上除外してもよいと定められた賃金を除く各種手当です。

法律上除外することが認められている賃金とは、次の7種類です。

①家族手当

②通勤手当

③別居手当

④子女教育手当

⑤住宅手当

⑥臨時に支払われる賃金

⑦一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

の7種類ですが、家族手当や住宅手当と称していても扶養家族や住宅ローン、家賃に関係なく一律に支給される手当は除外

することができません。

3.割増賃金の時間当たり単価の算出方法

①時給の場合は、その時間給金額

②日給の場合は、日給額を一日の所定労働時間で割った金額

③月給の場合は、月給額を所定労働日数で割り、さらに1日の所定労働時間で割った金額ですが、月によって所定労働時間が

異なる場合が多いので、労働基準法施行規則第19条で、年間所定労働時間を12で割って1箇月の平均所定労働時間数で割ること

を認めています。

 

 ・月給のみの場合=(基本給+諸手当)÷1箇月の平均所定労働時間

 ・日給と月給が塀給されている場合

  =(日給÷1日の労働時間)+(支給される諸手当÷1箇月の平均所定労働時間)

④出来高給、歩合給の場合

  =(当該賃金計算期間の出来高給総額÷当該出来高給を得るために要した総労働時間)

 ただし、出来高給の場合には、時間外、休日労働にも時間当たり賃金が支給されていることなるので、0.25倍または0.35倍の

割増分のみ支払えばよいのです。出来高給の場合でも時間外割増が必要だということが納得いかないことも多いと思われますが、

法律上割増賃金の支払いが定められています。