
昨年も、今年も、おそらく来年も続く摩訶不思議な、年末調整。
税金の無駄使いを許さない! と声をあげる人がいますが、それでは、自分の今年の所得税額を知っていますか?
いくら納付したか知らないのに無駄使いするな! というのですか?
この時期になると、会社員や公務員は、自分が今年納付した所得税を簡単に知ることが出来ます。
そうです、年末調整です。
1.そもそも年末調整とは何でしょうか?
国税庁のホームページでは
「 [平成31年4月1日現在法令等]
会社など給与の支払者は、役員又は使用人に対して給与を支払う際に所得税及び復興特別所得税の源泉徴収を行っています。
しかし、その年1年間に給与から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額は、必ずしもその人が1年間に納めるべき税額とはなりません。
このため、1年間に源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額と1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税額を一致させる必要があります。
この手続を年末調整といいます 」
要するに、毎年1回12月に会社に正しい税金の計算をさせて、徴収し過ぎがあれば会社から本人に還付しろ、不足があれば会社が徴収しろ、ですか。
還付されることが多いのですが、中には徴収される人もいます。
徴収される原因として多いのは、年の後半に就職したり死亡したりで扶養家族が減ることがあります。
年末調整では、12月の最後の身分関係が1年間継続されたとみなして扶養控除等の計算をしますので、年の途中で扶養者の増減があると1月からその扶養者数であったとします。
例えば、12月に扶養の子供が就職した場合、11月までは扶養であり12月から扶養でなくなったとしても、年末調整の計算では、1月から扶養でなかったとみなして扶養控除の対象ではなくなってしまうのです。1月から11月までの給料では扶養者1名として所得税を計算しているので所得税が若干安くなっているのですが、年末調整をすると1月から11月までの扶養者は1名減として計算されますので、所得税が高くなってしまい、徴収になることがあります。
この扶養者減のことを知らないで、「去年は還付されたのに今年は還付されないのはなぜだ!! 説明に来い!!」 と烈火のごとく言われたこともありました。説明しても分かってもらえなかったので、年末調整の資料全部を本人に返して確定申告に行ってもらいました。その後のことは聞いてません。
2.そもそも年末調整はいつから始まったのでしょうか。
昭和22年(1947年)のGHQ軍政下での税制改正で開始されたといわれています。
3.どのように計算するのか?
給料は、支給金額から所得税、市県民税や社会保険料等を差し引かれた金額が支給されます。
1年間の課税給与額から一定の金額を控除し算出した、正しい所得税の金額と毎月の給料からこの差引かれた暫定的な所得税の1年間の合計とを比較して
正しい所得税よりも暫定的な所得税が多ければ還付、正しい所得税よりも暫定的な所得税が少なければ徴収されます。
この計算の中に出てくる控除が極めて厄介なのです。
扶養控除
特定扶養者控除
配偶者控除
配偶者特別控除
生命保険料控除
損害保険料控除
その他にも多数の控除項目があり、混乱の原因です。
中でも摩訶不思議なのは、生命保険料控除と損害保険料控除。
この2つは誰が見てもわかるように保険会社の販売促進施策であり、当時の大蔵省の天下りのために存在しているようなものです。
この保険料控除は即刻廃止すべき。
他にも時代にそぐわない控除として、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除があるが、これも廃止。
会社員や公務員1人1人に基礎控除があるので、扶養だからとか専業主婦だからとかにかかわらず、全員基礎控除だけで問題ないでしょう。
ただし障害者控除は必要かもしれませんが。
そして給与額に応じて税率が違うのも混乱の原因。
わかりやすく、課税給与額から全員一律××%というように簡単に税額がわかるようにするべき。
4.年末調整はどうするべきか
私の持論ですが、年末調整廃止。
全国民が確定申告。
確定申告に行かせるために給料からの暫定的な所得税を多目に控除する。
こうして初めて自分の所得税額を意識出来て、税金の無駄使いへの見方が変わる。おそらく。
ついでですが、ウィキペディアによると、「年末調整を行う国はきわめて少数派であり、アメリカ合衆国やイタリアは自己申告制であるが、イギリスは都度調整、ドイツは部分的に事後調整制である」
とのことです。